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一歩先を行くコーチが持っている魔法のスキル!

スポーツコーチ、ビジネスコーチ、メンタルコーチ。。。

近年「コーチ」と名のつく職業が増えてきています。

その中にはスポーツ業界のように各競技団体で認定している資格を有するコーチもいれば、特に資格を要せず自らコーチと称することで活動しているコーチまで様々です。

コーチにより提供される「コーチング」は流行の兆しにありますが、その定義について国際コーチ連盟(ICF)は、以下のように説明しています。

コーチングとは、思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くことである ※1

 

この定義から、コーチとクライアント(コーチングを受ける者)の関係性に主眼があり、あらゆる分野に適用できる概念であることがわかります。

それゆえ「コーチ」と呼ばれる職業が様々な分野で生まれているのでしょう。

そうした中で、AIやビッグデータを扱う時代の到来により、コーチの在り方が変わってくるものと思われます。

では、未来を担うコーチとして活躍していくために必要なスキルはどのようなものなのか?

今回は、3月8日の国際女性デーに開催された国際女性デーカンファレンス「スポーツ×女性~東京2020へ向けて~」基調講演ロレイン・ラフレニエ(Coaching Association of Canada CEO)の講演を交えて、コーチ育成の動向、未来のコーチに求められるスキルについてご紹介いたします。

 

「コーチ(coach)」を考える

コーチの起源を遡ると、ハンガリーの町名「Kocs」に由来すると言われています。

この町で四輪馬車が最初につくられたことから、この馬車を「kocsi」と呼び、この言葉が英語圏に入って「coach」と呼ばれるようになりました。

つまり、コーチは元来「物理的に」人を目的地に送り届けるものを意味していたことがわかります。

それがいつしか物理的なものに限らず、人を目的地(ゴール)に送り届けるものをコーチと呼ぶようになったのです。

大事なのは、クライアント(馬車の利用者)が目的地(ゴール)を決め、それを送り届けるのがコーチであるということ。

決してコーチが目的地(ゴール)を与えて、クライアントに強制するものではないということです。

 

コーチに求められるスキルの世界的動向

コーチがクライアントを目的地(ゴール)に送り届けるためにどのようなスキルが必要となるのでしょうか?

そのヒントとして、世界経済フォーラム(WEF : World Economic Forum)が開催する通称「ダボス会議」では、2020年のビジネスリーダーや教育者等に求められるスキルのトップ10について、以下のように発表しています。

1位 複雑な問題解決力(Complex Problem Solving

2位 クリティカルシンキング(Critical Thinking

3位 創造力(Creativity

4位 マネジメント力(People Management

5位 人間関係調整力(Coordinating with Others

6位 情緒的知性(Emotional Intelligence

7位 決断力(Judgement and Decision Making

8位 サービスディレクション力(Service Orientation

9位 交渉力(Negotiation

10認識の柔軟性(Cognitive Flexibility) ※2

上位3位までをご覧いただくとわかるように、何か型にはめたり、成功体験に沿ったやり方を指導したりするスキルではなく、何か新しいものを生み出すようなスキルが求められるということがわかります。

ラフレニエ氏は、これを「統合する力(Synthesize)」と呼んでいます。

 

未来のコーチには「統合する力(Synthesize)」が必要だ!

かつて経済学者のシュンペーターは「イノベーションは新結合(既存のもの同士の新しい組み合わせ)」であると述べました。

新しいものを生み出すということは、必ずしも無から有を創り出すことを意味するわけではなく、既存のものを新しく組みあわせることで実現できるのです。

情報化社会において、氾濫する情報の中から有益なものをピックアップし、それらを組み合わせることでクライアントに新たな情報、最適な情報を提供する。

それが未来のコーチに求められる「統合する力(Synthesize)」なのです。

これまでのコーチは、実績のある規定のプログラムを提供してきました。

未来のコーチは、自己の振る舞いと振り返りからの学習を「Synthesize」し提供します。

これまでのコーチは、講義ベースの一方通行の情報提供を行ってきました。

未来のコーチは、メディア等を活用した幅広い学習、ハンズオンのような「Synthesize」された学習を提供します。

これまでのコーチは、確立されたスケジュールに従ってプログラムを提供してきました。

未来のコーチは、あらゆる状況を「Synthesize」して、適切なタイミングでプログラムを提供します。

未来のコーチに求められているスキルは「統合する力(Synthesize)」なのです!

 

スポーツビジネスコンサルタント 小川 裕史

 

<参考>
※1国際コーチ連盟日本支部、2016、「国際コーチ連盟によるプロコーチの倫理規定」、< http://www.icfjapan.com/whatscoaching/code-of-ethics > 、2018.4.5
※2 World Economic Forum、2016、「The 10 skills you need to thrive in the Fourth Industrial Revolution」、< https://www.weforum.org/agenda/2016/01/the-10-skills-you-need-to-thrive-in-the-fourth-industrial-revolution/ > 、2018.4.5