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女性アスリート特有の問題とどう向き合うか?

▼「「女」が土「台」となって、物事は「始」まる。すべてのスタートは女性なのだ。だから女性を大切にしなければならない」。少年院の少年たちに対して、命の授業を行うゴルゴ松本さんの言葉から。

▼男女共同参画社会の実現に向けて、日本政府は2020年までに指導的地位にある女性の割合を30%にすることを目標にしている。JOCによれば、加盟団体における女性役員の割合は、現在12%だという。女性役員が少なければ、スポーツシーンに女性の意見が反映されず、女性のスポーツ環境整備が進まないという問題が生じる。

▼この状況に一石を投じているのが、特定非営利活動法人バレーボール・モントリオール会主催の女性スポーツ勉強会である。先日その第12回が開催され、これまでの総まとめとして女性アスリートが抱える特有の問題について振り返った。

▼女性スポーツを考えるとき、「利用可能エネルギー不足」「運動性無月経」「骨粗鬆症」から成る「女性アスリート三主徴」の理解は欠かせない。女性は20代前半で骨密度のピークを迎えるため、それまでに「利用可能エネルギー不足」や「運動性無月経」によって骨組織が正常に形成されないと、将来「骨粗鬆症」に罹患するリスクが高まる。

▼「月経が順調にあることは、身体にある程度の余裕があるというサイン」。そう話すのは産婦人科医の高尾美穂さん。BMIが18.5を下回る女性アスリートは月経が止まる可能性が有意に高い。新体操やフィギュアスケートといった審美系、マラソンのような持久系の競技に多いのは特筆すべき点だ。

▼こうした月経が止まっているアスリートの問題がある一方で、月経があるアスリートの問題もある。リオ五輪の競泳に出場した中国の傅園慧選手は、競技当日に月経が重なり力を出し切れなかったことを告白し、大きな反響を呼んだ。

▼五輪出場の女性アスリートの多くが、低用量ピルを使用して月経をコントロールしている。しかし、日本をはじめとして、ピルを敬遠するアスリートも少なくないようだ。このことは、トップアスリートを指導するコーチの圧倒的多数が男性であること、「ピル=避妊薬」というパラダイムが根強いことと無関係ではあるまい。

▼無知は罪なり、知は空虚なり、英知を持つは英雄なり。哲学者ソクラテスの言葉だ。女性アスリートを取り巻く人々は、「女」性への知識を土「台」として、支援を「始」めるべきではないだろうか。

 

スポーツビジネスコンサルタント 小川 裕史

 

<参考>
特定非営利活動法人バレーボール・モントリオール会
http://montreal.sports.coocan.jp/